美容室の損益分岐点シミュレーション|出店前に必ず確認する5つの数字

出店するかどうかは、開けてから決まるのではなく開ける前の数字でほぼ決まっています。損益分岐点を「なんとなく」で置いたまま契約すると、その物件で働くスタッフが後から苦労します。ここでは私が27店舗を出してきた過程で使っている、出店前に必ず確認する5つの数字を公開します。

この記事はこんな方におすすめです

  • 2店舗目を検討しているが、出していいタイミングか判断できない
  • 物件を紹介されたが、その家賃が妥当か分からない
  • 売上はあるのに利益が残らない構造から抜けたい
  • 損益分岐点を出したことがない、または出し方に自信がない
  • 借入があるため出店に踏み切れない

結論。確認するのは①人件費率 ②家賃比率 ③一席あたりの売上 ④単価×入客数 ⑤回収期限の5つです。とくに人件費率55%と家賃比率10%の2本のラインは、割ると多店舗展開が成立しません。私は人件費率60%を超えた状態で店舗展開して黒字になっている例を、いまだに見たことがありません。

目次

数字① 人件費率 ── 上限は55%

店舗展開していくなら、割ってはいけない人件費のラインがあります。マックス55%以下です。60%を超えているところで展開して黒字のサロンを、私は見たことがありません。

Leoneの人件費率は48%です。なぜ展開できるかというと、残りを広告費に回せるからです。この設計が大事で、人件費と家賃を抑えて浮いた分が集客の原資になります。逆に人件費率が高いと、集客に投資できず、売上が伸びず、さらに率が下がらないという循環に入ります。

ここで大事なのは、人件費率は「給料を下げれば改善する」数字ではないということです。下げれば人が辞めます。改善するのは一席あたりの生産性のほうです。

数字② 家賃比率 ── 目標は10%

私は家賃比率10%を目標に置いています。この比率から逆算すると、物件の判断が一瞬でできます。

家賃30万円の物件 必要売上 300万円/月
家賃50万円の物件 必要売上 500万円/月
家賃80万円の物件 必要売上 800万円/月

「この立地なら行けそう」ではなく、その売上を作れる席数とスタッフ数が確保できるかで判断します。確保できないなら、どれだけ良い物件でも見送ります。

Leoneの店舗はほとんどが郊外です。家賃が安く、その差分を広告に投下できるからです。地方は求人がボトルネックになりますが、そこを雇用環境の設計で解ければ、利益構造は都心より有利になります。目安として人口15万人程度・近隣競合30サロン程度であれば、自力のマーケティングで集客も求人も成立します。

数字③ 一席あたりの売上

店全体の売上目標だけ置いても、現場は動きません。一席あたりいくら作るかまで落として初めて、スタッフが自分の数字として認識できます。私たちが置いている目安はこうです。

フレックス勤務 一席あたり 税抜60万円
フルタイム勤務 一席あたり 税抜80万円(出勤数で変動)

60万円は、単価13,000円で1日2名の入客があれば到達する水準です。2名入客できたら退勤して構わない設計にしています(出勤としては計上します)。無限に時間を使わせる設計にしないことが、結果的に定着率を守ります。

数字④ 単価 × 入客数

売上は単価と入客数の掛け算なので、どちらを動かすかを先に決めます。ここで多いのが「入客数を増やす」一択になってしまうケースです。

実例を挙げます。前職で1日20名を掛け持ちで入客していたスタッフが、うちに来て1日3名になりました。客単価は15,000円です。単価5,000円のお客様10人より、単価15,000円のお客様3人のほうが、売上も体の負担も優れています。入客数を追うと人が疲弊し、疲弊すると辞めます。辞めると席が空いて、また売上が落ちます。

単価を上げるとリピート率が下がると思われがちですが、実際は逆に働くことがあります。単価が上がると1人あたりにかけられる時間が増え、カウンセリングの質が上がるためです。

数字⑤ 回収期限 ── いつまでに分岐点を超えるか

損益分岐点を計算しただけでは足りません。いつまでにそこを超えるかを決めて、そこから逆算してフェーズを設計します。

立ち上げは緩やかに、どこかでギアを上げる

オープン直後は緩やかに立ち上げ、研修とマニュアルの定着に充てます。予約数は一定は担保されるので、勝負はどこでギアを上げるかです。ここを決めずに開けると、いつまでも助走のまま資金だけ減ります。

広告のアクセルは予約導線に同期させる

予約を受けられない状態で広告を回すと、費用がそのまま消えます。媒体掲載やLINE予約のローンチに合わせて広告を本格化させます。目安はオープンの約1ヶ月前から本気でアクセルを踏む形です。

スタッフは段階入社にする

全員を同時に入れると、立ち上がりの客数に対して人が余り、稼働率と人件費率が同時に悪化します。客数の立ち上がりに合わせて段階的に入れます。

借入があると出店できないのか

借入があること自体は事業課題ではありません。むしろ信用の証です。問題は返済を目的にした経営になることで、返済最優先にすると投資が止まり、成長も止まります。

見る順番は、営業利益 → 経常利益 → キャッシュが何ヶ月分あるか、です。追加融資を検討するなら、法人口座を作った銀行への紹介依頼から始めるのが基本で、黒字かつ営業利益率10%以上が判断の目安になります。

数字の管理は、未来の計画と過去の実績をクロスさせた予算表で行い、四半期ごとに締めてズレの原因を特定します。年1回の決算では修正が間に合いません。

よくある質問

Q. 人件費率が60%を超えています。どうすべきですか?

売上を増やして率を下げるか、一席あたりの生産性を上げるかの二択です。この状態で出店すると赤字店舗を増やすことになります。出店より先に構造を直してください。

Q. 家賃比率10%は都心では無理では?

都心は家賃が高い分、単価と回転で取り返す設計が必要になります。私たちが郊外中心なのは、家賃を抑えた分を広告費に回すほうが再現性が高いと判断しているからです。

Q. 2店舗目はいつ出すべきですか?

1店舗目の集客・リピート・採用・教育が仕組みとして回っているかが基準です。経営者が現場にいないと回らない状態では、2店舗目で必ず破綻します。数字より先に、仕組みの有無を見てください。

Q. 損益分岐点はどのくらいの期間で超えるのが普通ですか?

立地・規模・スタッフ数で変わるので一律の答えはありません。重要なのは平均値を知ることではなく、自店がいつまでに超えると決めるかです。期限がないと、ギアを上げる判断ができません。

※本記事の数値は株式会社Leoneの自社計測値および顧問先支援データ(2026年7月時点)に基づきます。掲載は事実の記録であり、同じ成果を保証するものではありません。
執筆・監修:山本 政樹(株式会社GAMEVATE 代表取締役CEO/Leone 27店舗を経営)


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この記事を書いた人

株式会社Leone/株式会社GAMEVATE 代表取締役CEO。兵庫県の郊外で、たった1人で美容室を開業。マーケティングをすべてインハウス化し、集客・求人・教育の仕組みを構築しました。現在はLeoneを全国27店舗まで展開し、実店舗を経営しながら現場で検証を続けています。株式会社GAMEVATEでは、美容室・サロンの経営改善支援として法人顧問25社・計95店舗の集客/求人/LP/広告運用を担当。オンラインサロン「GAMEVATE Lab」で70名の経営者へ実務ベースの指導を行っています。HAIRCAMP登壇4回・現在は顧問として参画。(数値は2026年7月時点)

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